卓球を始めたキッカケをというリクエストがありました。今日は、半世紀以上
も昔~昔の話をしてみましょうか。―わたくしごとではありますが‥。
長崎は坂の町です。中学を卒業した美少年が入学した高校も、城山という小
高い丘の上にありました。入学式を終えて、グラウンドの南端に立てば、眼下
には、浦上川です。原爆にやられて焼けただれた身を癒そうとたくさんの人が
流れ込んだ川です。その向こうのなだらかな丘陵が爆心地を囲む平和公園です。
原爆の惨禍は町の景色からは消えたとはいえ、小学生から中学生の間に何人
かのクラスメイトが原爆病で逝ってしまったことを思うと、この景色のなかで
は入学の喜びもそこそこです。
~おい新入り、入学おめでとう~。振り向くと、詰襟に制帽の3人連れです。
~おまえ、クラブ活動は決まったか?~。~まだ決めていません~と美少年。
~それなら、こっちへ来い~と連れていかれたのが体育館です。~上着を脱い
で、これを履け~。白い運動靴をポイと床に。ちょっと怖い思いで言われたと
おりにします。次に腰にロープを結びつけます。ロープの両端を二人がかりで
持って、白いマットを敷き詰めたところに立たされます。
~いいか、空中回転だ、ちゃ~んと支えるから思い切りやってみろ~。いやお
うなしの命令です。意を決して走ります。勢いつけて空中へ。えいや~ドタ~
ンと背中からマットに。~力を抜いて、もう1回だ~もう1回だ~と4回、5
回。ドタ~ンも同じ数です。~おまえは、体が硬いな、体操には向いていない。
もういいから帰れ~。望んでもいない体操部のテストは不合格です。
やれやれ、高校というところは、恐ろしいところだ、と思ったできごとでした。
入学初日の、このできごとが、卓球部を選ぶことにつながります。
それは次回に。
そうそう、美少年とは、若かりし頃のケンタク兄のことじゃよ。
4月30日 多
1. 無題